民主ガセネタ疑惑

 民主党的には「武部次男3000万振込み疑惑」と言いたいところだろうが、とてもそんな風には言える状態ではない。
 疑惑と言うのは、それを示唆する一定程度の信頼性のある証拠が存在して、初めて疑惑として成り立つ。一定程度の信頼性というものは、あるいは疑惑の当事者とされる人物が会っている写真や、筆跡あるいは直筆署名や印鑑などが一致すると思われる文書、当事者あるいはそれに近い人物による公の場での証言である。無論、100%の確実性などは、司法が事実認定として行うものなので不要だ。しかし、世間一般においてある程度の納得・信頼を得うるこういった証拠が無ければ、それは単なる噂・風聞の域を出るものではない。
 今回民主党の永田議員が提示した電子メールは、単なるプリントアウトされた活字文書に過ぎず、そもそも内容の真偽以前に、これが実際に送信されたメールであるかどうかすら確定できるものではない。電子メールはそのヘッダ情報に記載された送信元・受信元・中継されたサーバーが明らかになって、それが実在であるものが確認されて初めて証拠能力を持ち始める。送信元・受信元・中継サーバーのログ等でその存在を確定できればなお良いが、それは強制的な調査権限が無ければ難しいだろう。その際、初めて国政調査権というものが選択肢として入ってくる。
 その国政調査権だが、今日の党首討論民主党の前原代表は、自民党武部幹事長の次男にライブドアの堀江前社長から金が流れた「らしい」ことを根拠に、民主党が掴んでいる「らしい」銀行口座への国政調査権発動を担保するよう要求した。この国政調査権は、証人喚問・参考人招致・個人情報の調査などの場合、警察による強制捜査に相当するものである。警察の強制捜査は、令状主義と言って、裁判所の令状が必要になる。当たり前のことだが、警察が不確かな証拠で強制捜査など行おうものなら、国民生活は大きく脅かされかねない。
 今回の国政調査権の発動は、武部幹事長の次男もしくはライブドア関係の金融口座に対してである。当然、両者とも個人・法人の差はあるだろうが、民間の口座であることには間違いないだろう。となれば、これに対して国政調査権を発動するのは、個人情報の保護を国政の名の下に侵害するということである。当然ながら、こうしたことを行うには相応の証拠が必要だろう。そこで最初の証拠問題の話に戻るが、今回永田議員が提示した文書は、現状なんら証拠能力を持っていない。このようなもので個人情報に対して国政調査権を発動できるのであれば、それこそ怪文書や市井の噂、2ちゃんねるの書き込みすら発動できる証拠となってしまう。これは明らかに権力の濫用につながる行為であり、与党を監視・批判すべき野党が要求するなど言語道断の話である。
 昨日、前原代表は「明日の党首討論を楽しみに」としきりに語っていた。私としては、当然国政調査権の発動に相応しい新証拠を提示するものである、いや、すべきであると思って注視していたのだが、結局馬鹿の一つ覚えのように国政調査権の発動を要求するだけだった。


 つーか、民主党さんよ、勘弁してくれよもう。