郵政民営化法案の参院での否決から電撃解散、総選挙へ雪崩れ込んだ終盤国会。ある程度情勢が固まってきたようなので、リハビリがてら文を書いてみることにする。
 まず今回は解散のきっかけとなった郵政民営化について。ちなみに私は民営化賛成論者である。


 まずそもそもの位置づけとして、郵政民営化の問題は郵便局に限らず、肥大した官業を民間に委ねる事で縮小し、国家財政を健全化していくことにある。郵便局の問題はあくまでその第一歩に過ぎない。
 現在の国及び自治体の慢性的な財政赤字は談合なども含めた非効率的な公共事業と高止まりした公務員給与の2つが原因となっている。事業コストの切り詰めも人件費の抑制も、民間企業であれば利益を確保するためにしゃかりきになってやるところだが、自分の懐が痛まないお役所では期待するべくも無い事は、橋梁談合事件や大阪市の無駄遣いなどで証明されている。旧国鉄(現JR)・旧電電公社(現NTT)・旧専売公社(現JT)が民営化後、特に旧国鉄の巨額債務を処理するために大量の税金が投入されたことを考えれば、民間に委ねる事が可能な官業はどんどん民営化していくべきなのは言うまでも無いだろう。


 さて、その民営化、郵便局単体で突き詰めて考えた場合、果たして実行の必要性はあるのだろうか? 私は「ある」と思っている。その最大の理由は、郵便局という官業の存在そのものが、それ自体の経営を圧迫するような組織構造になっていることに尽きる。
 郵便局には「全国特定郵便局長会」(全特)と「日本郵政公社労働組合」(JPU、旧全逓信労働組合全逓)という2つの団体が存在する。全特は全国に2万近く存在する特定郵便局の局長によって組織され、そのOB団体である「大樹」と共に自民党の支持団体となっている。この団体の存在意義はただ一つ、特定郵便局長既得権益の維持である。この既得権益とその維持のための活動については下記の記事を参照してもらいたい。
http://nb.nikkeibp.co.jp/free/YUSEI/20020116/101648/
http://nb.nikkeibp.co.jp/free/YUSEI/20020116/101649/
 こんなことをやっているような連中をのさばらせている限り、郵政事業の健全化など絵空事もいいところだ。そうである以上、後戻り不可能な民営化に追い込むしか方法は無いだろう。
 JPUに関しては文字通り全国の郵便局員労働組合であり、連合の傘下であることから当然民主党の支持団体となっている。こちらは郵政民営化が行われれば公務員の地位を失い、特定郵便局の整理統合が行われれば自分たちの雇用に直結するためやはり民営化には反対している。民主党が国会で対案を出せず、選挙戦でも完全民営化とは絶対に言えないのはJPUの存在があるがゆえである。


 さて、一方で民営化によるデメリットも色々と指摘されている。その際たるものは「郵便・貯金・簡保の全国的なサービス網の維持」である。郵便配達網の維持などは民間宅配会社のメール便などが軌道に乗りつつあることから問題は解消されつつあるが、貯金・簡保のサービスは依然過疎地において重要性が高いものである。そして残念なことに、現行の法案ではこの問題についての対応は不十分と言わざるを得ない。だがしかし、これを民営化をすべきでないとの結論に直結させるのは短絡で瑣末に捉われ根本の問題から目を背けていることになる。このまま郵政事業全体がジリ貧になって郵貯資産が焦げ付いてしまえば元も子も無いのだ。
 この問題については農協・漁協系の金融機関や地方信金に対する認識が低いことがまず指摘できる。更に言えば、例えば金融規制の緩和と補助金を通じて過疎地に小規模・低コストの金融機関出張所を出せるようにしたり、コンビニのノウハウを利用して郵便局の規模を縮小するなどすれば、コストダウンをしつつサービス網を維持することは十分可能と言える。「今と同じサービスを提供しないと駄目だ!」などという傾国同然の無茶苦茶なことを考えているのでなければ、いくらでも対応はできるものであろう。
 また、民営化によって国民の金融資産が外資に食われることを懸念する声もあるが、そもそも国際化が進み国際資本が続々登場している昨今、ことさらに国内資本と国外資本を色分けして騒ぎ立てるのはナンセンスではないだろうか。「外資ハゲタカ論」はかつての金融ビッグバンなど事あるごとに耳にするが、実際今の民間金融機関がどれほど外資に食い物にされているというのか。また、外国資本だけでなく国内資本の金融機関にも当然郵貯資産は流れるであろうから、現状の国債買い支えなどといった債権漬けを助長するような馬鹿げた運用方法から脱却してかなりの資金が市場に出回ることになり、半端な金融緩和よりよほど市場の金回りをよくすることに考えは至らないのであろうか。


 まだまだ語り足りないことは山ほどあるが、とりあえずこんな理由で私は郵政民営化はまず賛成である。出来うるなら総選挙後の臨時国会で民営化案がより突き詰めた形になることを願わずにはいられない。