PCオーディオ雑考

 とりあえずPCオーディオが一段落しつつあるのだけれど、あまりオーディオ趣味に関して語れる人が周りにいないので、覚え書き代わりにPCオーディオについて語ってみる。

 一般的なPCにおけるオーディオ環境というのは、通常はオンボード(デフォルト)の音声出力端子(通常はステレオミニプラグ)からアンプ内蔵スピーカー(アクティブスピーカー)、もしくはヘッドフォン端子からヘッドフォンであろう。多少金をかけたとして、サウンドカードから同様の出力か。これら一連のシステムを、少し分解して考えると、大雑把に以下のような段階に分かれる。

  1. 最初にOS上で走っている音楽データを、デジタル信号として出力する
  2. 出力されたデジタル信号を、アナログ信号に変換する
  3. 変換されたアナログ信号を増幅する
  4. 増幅された信号によってスピーカーorヘッドフォンを鳴らす 

 アクティブスピーカーの場合は1と2をPC内、3と4をスピーカー内で行っている。ヘッドフォンの場合は1〜3がPC内となる。今回は、ひとまずスピーカーの場合を取り上げてみる。

 さて、まずPCオーディオにおいて問題になるのは、2で挙げたデジタル信号からアナログ信号への変換、DAコンバートの段階である。アナログ信号というのはその性質上、極めてノイズの影響を受けやすい。そして、PCの内部はノイズが非常に多い。よって、PC内部でDAコンバートを行うのは、音質的には自殺行為といえる。少しコストをかけたサウンドカードなどになると、ノイズ対策のためにシールドを装備したりしたものもあるが、それはノイズを軽減することはあっても、ノイズの影響を排することはできない。根本的な対策としては、ノイズに溢れたPCの中ではなく、PCの外でDAコンバートをする必要がある。そこで登場するのが、外部DAコンバーターDAC)である。

 外部DACを利用する場合、PCからDACまでは、ノイズに強いデジタル信号で音声データを送る。デジタル信号での送信方法としては、オーディオ機器で利用される光デジタルケーブルもしくは同軸デジタルケーブル、またPCと外部との間でデジタルデータをやり取りするUSB及びIEEE1394といった物がある。最近は光デジタル出力端子を備えたマザーボードも増えてきており、一方で外部DACにもUSBでの入力に対応した物も増えている。なお、デジタルでの信号送信にも、時間軸の歪みなどといったものがあったりするらしいのだが、そこら辺はマニアックに更に輪をかけたものになるので、ここでは割愛する。

 さて、デジタル信号にて導かれた音声データをDAコンバートするDACに関してだが、これを外付けにすることには、ノイズ以外にもう一つのメリットがある。それは、回路としてサイズの制約から逃れることができるということである。DACにおいて、DAコンバートを司るのは、小さなICチップである。このICチップは、各種メーカーから様々な物が出ているが、その価格は精々数千円程度までとさほど高くなく、高級オーディオ機器とPCの拡張カードで、全く同じチップが使われていたりすることもよくある。では、高級オーディオ機器とPCの拡張カードDACは、何が違うのか。それは、信号に使われる電気であり、電気を制御するコンデンサなどの素子である。DACの性能は、DACチップではなく、投入されたコンデンサなどの素子の量に左右される。良質なコンデンサなどを豊富に投入することにより、DACチップの性能が引き出される。このため、高級オーディオ機器としてのDACとなると、ビデオデッキくらいの大きさで、重さが10kgを超える物もザラにある。ともかく、こうしてアナログ信号に変換された音声データが、次に音量を確保するための増幅器である、アンプへと送られるのである。

 さて、今度はアンプとスピーカーである。アンプ内蔵であるアクティブスピーカーだが、これは本来不自然なものである。スピーカーとアンプというのは、それぞれ異なる機能を持った機材である。アクティブスピーカーとは、手軽さとコンパクトさを重視して、この異なる機能を持った機材を一つの筐体に詰め込んで、見せかけ上一つの機材にまとめたというだけである。そして、スピーカーにせよアンプにせよ、本来異なる機材と同居させていいものではなかったりする。何故なら、スピーカーはその箱も含めて振動によって音を出す物であるからして、振動によって音を出すこととは無関係のアンプを積み込むと、どうしても設計に無理が出てくる。一方アンプはDACと同様かあるいはそれ以上に、電気に気を使い、また発熱などの問題もあるため、これもまた原則単体でのユニットとして完結しているべきものである。結局のところ、アクティブスピーカーはある程度までの性能であればコストパフォーマンスが良いが、それなりの性能を求めようとすると、一つの筐体に二つの機材が詰め込まれているが故に、無理が出てきてしまうのである。

 とまあ、だらだらと書き連ねてきたわけであるが、これを実践しようとするとコストは非常にかかる。まあ結局、機材にも萌えられるオタク向けの世界なんだよね、ということで、お後がよろしいようで。

 何か尻切れトンボだなー。